消費税の計算方法には、実額方式によるものと、簡易課税方式によるものとがあります。実額方式が消費税の原則通り計算されるのに対し、簡易課税方式は「みなし仕入率」(業種により異なる)を利用した簡便法です。実額方式に比べて、記帳がしやすい、消費税額の面でも有利になる場合が多い等の理由から簡易課税方式を選択する場合が多いのですが(但し、基準年度(注1)の課税売上が5千万円を越える場合は選択することができない)、次の点に注意を要します。
建物を建てた、機械等を購入した等多額の設備投資をすると、それらについて支払った消費税が売上等に対する消費税を上回ることがあります。このような場合、実額方式を選択していれば消費税の還付を受けることが出来ますが、簡易課税方式を選択している場合には、「みなし仕入率」で支出に伴う消費税を計算することになるため還付を受けることが出来ないのです。また、免税事業者である場合も同様です。
従って、現在、免税事業者である、或いは簡易課税の適用を受けていて多額の設備投資をする予定があり、消費税の還付が受けられそうだという場合には、実額方式に変更しておいた方が有利です。
簡易課税方式から実額方式への変更届を失念した為に、消費税の還付を受けることが出来なかったという例が少なからず発生しているようです。なかには、数千万円に及ぶ例も報告されています。「届出書一枚を期日までに提出しなかったばかりにどうして?」と思われるかもしれませんが、立法としての是非はともかく、法律がある以上、争っても裁判所はなかなか味方をしてはくれません。決められた通り期限内に届出をするほかありません。
事務所内でも対策を講じていますが、関与先の皆様から必要な情報を頂かないと対応することが出来ません。是非ご協力をお願い致します。
尚、消費税の選択・適用については仕組みが複雑ですので、詳細につきましては当事務所職員までお尋ね下さい。
(所長 布川 博)
(注1)当該事業年度の前々事業年度をいいます。
|